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RESEARCH

胸部悪性腫瘍

研究内容

肺癌を含む多くの固形癌は、種々の遺伝子異常が積み重なることにより生じると考えられている(多段階発癌説)。我々は、これまで約 20 年に渡り肺癌の発生・進展に関与する遺伝子異常などの分子生物学的な解析に加えて、臨床データの解析を行うことで様々な角度から革新的な論文を発表してきた。現在は、新たな治療標的の探索や新規の診断マーカーの発見・AIを取り入れた予後予測モデルの構築に関する研究にも取り組んでいる。肺癌・悪性中皮腫の細胞株に関しては、国内でもトップクラスの数・種類を保持しており、遺伝子発現レベルを網羅的に解析した独自のデータベースを保有している。同時に、10年以上に渡って積み上げられた名古屋大学における胸部腫瘍の治療経過についてもデータベース化しており、臨床情報・遺伝子異常に加えて、最新の治療に対する抗腫瘍効果を解析することが可能である。これらのデータベースを最大限に活用することで、癌化に関与する遺伝子発現・変異の有無を検索し、有望な治療標的候補となり得る標的分子を同定する。その上で、細胞株において標的遺伝子の過剰発現もしくは発現抑制といった解析を行い、増殖能や浸潤能などのがん細胞の悪性形質に与える影響を検討する。近年は、愛知県がんセンター研究所や米国にあるMD Anderson Cancer Centerをはじめとした国内外の様々な研究施設と革新的な技術開発を共同で行なっており、標的分子を見定めた上で、免疫チェックポイント阻害剤に不応性のがんにおける分子生物学的解析や、新規個別化治療の基盤構築など、臨床応用を目指した先端研究を展開している。さらに、名古屋大学学内においても多様なグループと共同研究を行なっており、医学系研究科 呼吸器外科学講座と連携し肺癌における新規バイオマーカーの探索や、総合保健学専攻 オミックス医療科学・生体防御情報科学講座と共同で、予後不良の肺癌細胞に対する遺伝子ライブラリーのスクリーニング、工学部生命分子工学専攻 分子生命化学講座と共同で新規核酸医薬品の開発など、画期的かつ実用性を見据えた研究に取り組んでいる。


臨床研究については、肺癌、悪性胸膜中皮腫を対象とした複数の多施設共同医師主導治験、特定臨床研究に取り組んでいる。肺癌における希少遺伝子異常を明らかにし、有効な治療を個々の患者さんに届けることを目的として、アジアにおける個別化医療の確立を目指した産学連携遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」に参画している。これまで非小細胞肺癌におけるEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、RET融合遺伝子、MET遺伝子異常、ROS1融合遺伝子、HER遺伝子変異および小細胞肺癌における PI3K/AKT/mTOR 経路の遺伝子異常を対象とした治療開発に医師主導治験実施施設を担当してきており、今後も名古屋大学主導の医師主導治験、特定臨床研究を遂行していく計画である。さらに近年ドライバー遺伝子異常の有無、腫瘍PD-L1発現によって推奨される各種標準治療が多様化してきており、実地診療における治療選択の意思決定に寄与するためAIを活用して、治療選択に基づく臨床アウトカム予測アルゴリズムの確立をめざす研究に取り組んでいる。

詳しい説明はこちらよりご覧いただけます

胸部悪性腫瘍_1

主な業績

  1. Tanaka I, Dayde D, Tai MC, Mori H, Solis LM, Tripathi SC, Fahrmann JF, Unver N, Parhy G, Jain R, Parra ER, Murakami Y, Aguilar-Bonavides C, Mino B, Celiktas M, Dhillon D, Casabar JP, Nakatochi M, Stingo F, Baladandayuthapani V, Wang H, Katayama H, Dennison JB, Lorenzi PL, Do KA, Fujimoto J, Behrens C, Ostrin EJ, Rodriguez-Canales J, Hase T, Fukui T, Kajino T, Kato S, Yatabe Y, Hosoda W, Kawaguchi K, Yokoi K, Chen-Yoshikawa TF, Hasegawa Y, Gazdar AF, Wistuba II, Hanash S, Taguchi A: SRGN-Triggered Aggressive and Immunosuppressive Phenotype in a Subset of TTF-1-Negative Lung Adenocarcinomas. J Natl Cancer Inst. 2021 Sep 15.
     

  2. Kodama Y, Tanaka I*, Sato T, Hori K, Gen S, Morise M, Matsubara D, Sato M, Sekido Y, Hashimoto N.: Oxytocin receptor is a promising therapeutic target of malignant mesothelioma. Cancer Sci. 2021 Sep;112(9):3520-3532. *corresponding author
     

  3. Matsuzawa R, Morise M*, Ito K, Hataji O, Takahashi K, Koyama J, Kuwatsuka Y, Goto Y, Imaizumi K, Itani H, Yamaguchi T, Zenke Y, Oki M, Ishii M.Efficacy and safety of second-line therapy of docetaxel plus ramucirumab after first-line platinum-based chemotherapy plus immune checkpoint inhibitors in non-small cell lung cancer (SCORPION): a multicenter, open-label, single-arm, phase 2 trial. EClinicalMedicine. 2023 Nov 10;66:102303 *equal first author and corresponding author
     

  4. Herbst RS, Giaccone G, de Marinis F, Reinmuth N, Vergnenegre A, Barrios CH, Morise M, Felip E, Andric Z, Geater S, Özgüroğlu M, Zou W, Sandler A, Enquist I, Komatsubara K, Deng Y, Kuriki H, Wen X, McCleland M, Mocci S, Jassem J, Spigel DR.Atezolizumab for First-Line Treatment of PD-L1-Selected Patients with NSCLC. N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1328-1339.

チームリーダーから一言

森瀬 昌宏 講師

森瀬 昌宏 講師

胸部悪性腫瘍の代表的な疾患である肺癌の治療は、最近10年で大きく様変わりしました。がんドライバー遺伝子異常を標的とした分子標的治療、免疫療法の実用化によって、遠隔転移を有する進行肺癌の患者さんも治療が奏功すれば、仕事や子育てをしながら長期生存をめざせる時代が実現しています。一方で、これらの治療に最初から効果を示さない(初期耐性)患者さんや、奏功していた治療が利かなくなる(獲得耐性)患者さんに対するさらなる治療開発が大きな課題となっています。新たながんドライバー遺伝子に対する治療開発をめざした医師主導治験や特定臨床研究に取り組みつつ、当科病院助教の神山先生とともにAIを活用した個別化医療の実現を目指した観察研究もおこなっていますので、ご興味のある先生方はぜひ一緒にお仕事しましょう!

長谷 哲成 病院講師

長谷 哲成 病院講師

他科の先生、基礎の先生、関連病院の先生、他学部の先生、企業の方、など、多くの先生方に御指導頂きながら、胸部悪性腫瘍に対するトランスレーショナル~臨床研究を進めています。論文を書いたことのない先生も、まずはcase reportから開始して、原著論文へとstep upできる様に、一緒にテーマを考えます。患者さんに還元できる様、たまに特許なども取りながら、無理なく楽しく一緒に研究を進めていければと考えています。

田中 一大 助教

田中 一大 助教

幅広い呼吸器疾患の日常臨床に携わる中で、領域にとらわれず幅広い視点で問題解決ができるように、色々な学部の先生方をはじめ、大学や国を超えて様々な人とコミュニケーションをとりながら研究を進めています。 特に予後不良な免疫チェックポイント阻害剤に不応性の肺癌・悪性中皮腫に対して、腫瘍のバイオロジーを追求しながら新たな創薬開発を行うことが目標です。

‘呼吸器疾患に苦しむ人の助けになりたい’という思いを持つ沢山の先生方が、名古屋大学呼吸器内科に来るのを心待ちにしています。臨床の課題を克服するために、一緒に頑張りましょう。

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